初号機と零号機~ユイの希望とゲンドウの陰謀~・その3操縦者の記憶とリツコの疑念
ネタばれ感想
※詳細なストーリーなど、作品の内容について書かれています
零号機の素体とコアの謎についての考察、
最後に、相互互換試験でレイとシンジが見たお互いのイメージの正体と、
零号機の魂の正体を確信したリツコの悲哀についてまとめました。
機体相互互換試験でレイとシンジが見たイメージの正体
第一回機体相互互換試験において
交換したEVAの中でシンジとレイはお互いの匂い、
そして記憶やイメージを感じたり見たりしています。
まずレイが見たものは、
本編の映像から推測すると
シンジくんが見た景色や人物(初号機の素体も)です。
一方シンジくんが見たものは、
膨大なレイのイメージ、そして幻影のレイと
襲いかかって来るような不気味なレイです。
これらはEVAに蓄積された
操縦者のパーソナル(個性・記憶の総体や意識・人格)だと考えています。
何度も何度もEVAとシンクロして一体になっているうちに、
EVAに操縦者のパーソナルが刷り込まれているのではないかと思うのです。
レイの自問自答、シンジの記憶から世界と自分を知ろうとしている
レイ「山 重い山 時間をかけて変わるもの
空 青い空 目に見えるもの 目に見えないもの
太陽 ひとつしかないもの
水 気持ちのいいこと 碇司令?
花 同じものがいっぱい いらないものもいっぱい
空 赤い、赤い空 赤い色 赤い色は嫌い
流れる水 血 血の匂い 血を流さない女
赤い土から作られた人間 男と女から作られた人間
街 人の造り出したモノ エヴァ 人の造り出したモノ
人は何? 神様が造り出したもの? 人は人が造り出したもの?
私にあるものは命 心 心の容れ物 エントリープラグ それは、魂の座
これは誰? これは私 私は誰?
私は何? 私は何? 私は何? 私は何?
私は自分 この物体が自分 自分を作っている形 眼に見える私
でも私が私でない感じ とても変 私が溶けていく感じ 私がわからなくなる
私でない人を感じる 誰かいるの? この先に?
碇君? この人知ってる 葛城三佐 赤木博士 みんな クラスメイト
弐号機パイロット 碇司令?
あなた、だれ? あなた、だれ? あなた、だれ?」
第拾四話「ゼーレ、魂の座」 レイのセリフ
レイはリリスの肉体から抜き取られた魂であり、
人工的な肉体に幽閉された状態では
常に喪失感・虚無感を感じていると思います。
なのでシンジの記憶に焼きついた地球の景色や人間達を、
自分の記憶や想いと共に
ひとつひとつ確かめるように自問自答していると思います。
以下にレイの独白の分析を書きます。
悠久の時を過ごしてきたからか
地球の自然には超越的な見方をしています。
「赤い土」がアダムを指しているならば
「赤い土から作られた人間」とは使徒の事。
「男と女」はリリスの子孫であるリリン。
「神様」が造り出した「人」はアダムとリリス、生命の起源たる二つの存在。
「人は人が創り出した」とは
「使徒やヒト」は「アダムやリリス」が造り出したという意味。
「私にあるものは命 心」とはレイに宿るリリスの魂であり、
レイ自身が「心の容れ物 エントリープラグ」「魂の座」たる存在であるということ。
と同時に、エントリープラグの意味。
「これは誰?これは私」とレイは自身の肉体を確認するけれど、
本来の姿であるリリスとは認識しておらず、
大量に創られたスペアパーツの意味もまだわからず
何度も「私は何?」と自身の存在意義を知りたがっている。
かろうじてリリスの魂は仮の肉体に宿り綾波レイとなっているけれど、
初号機=リリスの分身の体内にいると
「私が溶けていく感じ」と魂が本来の肉体に戻ろうとするような感覚がしている。
次に初号機とのシンクロをとおしてシンジの人物に関する記憶が見え、
レイも知っている人々は確認出来るが、
初めて見る初号機の正体=リリスの分身とユイの融合体には
「あなた、だれ?」と知りたがっています・・・。
シンジが感じた、リリスの魂の全て
シンジ「なんだこれ? あ、頭に入って、来る、直接、なにか―。
あ、綾波?綾波レイ?綾波レイだよな、この感じ。綾波?違うのか?」
第拾四話「ゼーレ、魂の座」 シンジのセリフ
シンジが見ているのは、
レイ自身の記憶と言うよりシンジが見たレイばかりです。
それは、人工的なレイの肉体からは記憶は刷り込まれず、
その正体であるリリスの魂のイメージのみが
零号機に蓄積しているからだと思われます。
以前考察した通りリリスの魂が分裂しているのならば
(記事「幻影のレイ」の正体・・・リリスの魂は3つに分かれている)、
まず膨大なレイのイメージはいつもシンジが接している「自我」のリリス、
幻影のレイは「超自我」のリリス、
最後の不気味なレイは「エス」(=本能)のリリスということになり、
シンジはリリスの魂をまるまる感じとったといえます。
「綾波?」であるようで綾波でない違和感=リリスを感じ
「違うのか?」と言ったのだと思います。
リツコの、ゲンドウへの疑惑
リツコは零号機に関する二つの実験の結果を見て、
「でも・・・まさか・・・」と「零号機が殴りたかったのは私ね・・・まちがいなく」
というセリフからも推測すると
(記事「初号機と零号機~ユイの希望とゲンドウの陰謀~・その2零号機の魂」)、
零号機にナオコの魂の存在を感じ始めたのではないかと思います。
シンジが徐々にレイや初号機から母ユイを感じとっていったように、
「エヴァ」では子が親の存在やイメージを感じる現象が起きるからです。
レイやシンジを拒絶し自分やゲンドウを恨んでいる人物は
ナオコしかいないのではないかと・・・。
そしておそらくそんな非道な事が出来るのはゲンドウだけであり、
彼に対して徐々に母同様愛憎入り混じる感情を抱くようになります。
第拾七話「四人目の適格者」のダミーシステム用の水槽の前でのシーン、
リツコがゲンドウを睨んでいます。
死してなお母ナオコを利用しているのではないかという疑い。
レリエル戦での初号機の暴走に改めて思い知ったEVAへの恐怖心、
科学で創られたただの人形なのにユイに生き写しなだけで
ゲンドウの寵愛を受けているレイへの憎しみ・・・。
そして自分も母と同じく彼の陰謀に利用されているだけなのではないのかと
薄々感じてきているからだと思います。
でも彼女はゲンドウを愛し続け利用される生き方を続けます。
レイの身代わりとなりゼーレの前で恥辱を受けた事で、
ゲンドウに復讐する行動に出るまでは・・・。
見せかけでは大事にされているようだが、
実は道具としてゲンドウに利用されているレイ。
リツコとレイは所詮ユイと再会する為の道具であり身代わり・・・
そんなレイと同等の扱いならばまだ許せたかもしれない。
しかし同じユイの代わりとしてのモノでも
レイの方が勝っていたことが許せなかったのではないでしょうか。
以上、零号機の素体とコアの謎についての考察を、
初号機との関連性などと合わせてまとめてみました。
つくづくゲンドウの非道さが浮き彫りになる結果になりました。
そんなゲンドウをEVAの中でユイはどう想っていたのか、
また記事にまとめられたらと思います。
参考資料
- アニメ版の第伍、拾四、拾六、拾七、拾九、弐拾、弐拾壱、弐拾参、25話
- 新劇場版:序、破
- 漫画版のVolume 3、5、6、8、10、12(巻数)
- エヴァンゲリオン・クロニクルの旧版 30号、新訂版 2、3、5、6、10、12号
- エヴァンゲリオン用語事典
- エヴァンゲリオン解読
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- 初号機と零号機~ユイの希望とゲンドウの陰謀~・その2 零号機の魂
- 初号機と零号機~ユイの希望とゲンドウの陰謀~・その1 パーソナルの酷似
- 「幻影のレイ」の正体・・・リリスの魂は3つに分かれている
- 第23話・リニューアルDVDで消えた、旧DVDのアダム・初号機・ユイを考える
- 「まごころを、君に」ラスト考察(シンジとアスカについて)
- ユイさんがEVAとなった過程を想像してみました
- ユイさんは、ゲンドウさんに自分の目的を明かしていたんでしょうか?
- EVAとなって永遠に生き続けるのはユイさんの"夢"だけど、"罰"でもあるのだろうか?
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