CONTINUE Vol.50 鶴巻和哉・6時間インタビューの感想
ネタばれ感想
※詳細なストーリーなど、作品の内容について書かれています
「鶴巻和哉 6時間独占ロングインタビュー」と題して
2009年末と2010年初の2回にわたって行われたという
計6時間の濃~い鶴巻和哉さんのインタビューが掲載されています。

今号は表紙も鶴巻さんの描くマリ。
うわ、セクシーです!
このイラストの第一印象は、
娘と一緒に「ここが開くんだ~。」でした(笑)。
足から着て腕を通し最後に胸をパチッと閉めるの?
(映画ではどうだったかな?もう装着後だったかな・・・)
鶴巻さんがアニメーターを目指したきっかけに始まり、
GAINAXへの移籍や現在「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」のお仕事をされるまでの
エピソードがたっぷり読めました。
テレビアニメを見ているうちに金田伊功さんの独特な表現が
いくつもの作品に共通していることに気付きアニメーターという職業を知った事。
幼い頃は乗り物や秘密基地とかの断面図に夢中になってた事。
高校の特撮同好会でたくさん作品を鑑賞したり実験した事。
スタジオジャイアンツに入社して野心を燃やした事。
GAINAXに移籍し「ふしぎの海のナディア」制作に関わった事。
作画監督や演出などお仕事の範囲が広がり、
そして「新世紀エヴァンゲリオン」ではどっぷり関わった事。
「フリクリ」で監督デビューをし、
「トップをねらえ2!」や「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」で
庵野作品のリメイク?的な監督へと・・・。
鶴巻さんの考え方やご趣味や苦労のお話はどれも興味深いものばかりでした。
そのなかで「エヴァ」や「ヱヴァ」についてのお話について
感想を述べさせていただきます。
第拾六話の裏話から思いついた、シンジの精神世界の新たな考察
旧世紀版・第拾六話「死に至る病、そして」で、
シンジくんが使徒レリエルの虚数空間(体内?)に取り込まれた時、
夕暮れの中走る電車の車内でもうひとりのシンジと対話する場面のお話です。
使徒がシンジに話しかけてくる。使徒との会話というのが一番最初のアイデアなんですよね。
それまでコミュニケーション不可能だったのに、使徒が人間に興味を持ち始めて、何事かを話しかけてくる。
(中略)
使徒がシンジを体内に取り込んでる状態だから、シンジの情報からもうひとりのシンジを作り出して、会話する。
その後庵野監督の意向もくんで、使徒との会話というよりも
シンジくんが自分自身と問答を繰り返すシーンとなったそうです。
でもどちらともとれるような意味深な会話とも。
影が本体というレリエルの設定、
心の中のもう1人の自分との対話、
シンジの危機的状況を救うべく現れた母のイメージ、
EVAの謎。
私も好きなエピソードの回です。
使徒に取り込まれたシンジくんはシステムの限界から命の危険を感じ、
窮地に立たされて初めて悟った自分自身、
というのが私のこれまでの解釈でした。
死の間際に見えるといわれる「走馬灯のように思い出が蘇る」みたいに、
父や母との思い出がフラッシュバックし、
超自我が自我の人生を分析しているというふうに。
でもこのインタビューを読んでもうちょっと深い考察を思いつきました。
後のアラエルやアルミサエルと同様
レリエルも人間への心理攻撃としてA.T.フィールドを使って
その人が精神的ダメージを受ける情報=嫌な思い出を利用してきます。
シンジくんがパニック状態になり精神が不安定になったので
レリエルが攻められる隙ができてしまい、
シンジくんの嫌な思い出である
「父に見捨てられ心を閉じ始めた幼き日の自分」の情報を手に入れ、
レリエルはその姿をとってシンジくんを攻めてきます。
と同時にシンジくんから見たレリエルは
まるで鏡のようになったA.T.フィールドに映る自分自身でもあり、
レリエルの言葉は自分も心の奥底で感じていた本音であるから、
シンジくんが自分自身と対話している場面にも見える、
というものです。
シンジくんがただ1人で
内なる自分を見つめ悩み苦しんでいるだけではなくて、
使徒の攻撃や干渉があったシーンなんですね。
あと、このシーンで初登場したシンジくんの精神世界を表現する
「夕暮れの中を走る電車の車内」
がとても印象的なのですが、
この電車は鶴巻さんの幼いころの思い出が元になっているんですね。
以前、鶴巻さんの夢が元になっていると読んだことがあるのですが、
実際に体験したことらしいです。
夕暮れってなんだか物悲しいですし、
まして子供ひとりっきりだとさみしいし、
走る電車にどこに連れて行かれるか怖い感じがしたら・・・
シンジくんの不安な気持ちを素晴らしく表現していると思います。
「序」の冒頭の赤い海に込められている狙い?
「新劇場版」の企画が庵野総監督から伝えられ、
鶴巻さんは旧世紀版の総集編にちょっと最後が違う「エヴァ」程度なものと考え、
片手間でも制作出来るなと「破」を作ってている段階でも思っていたそうです。
『序』の冒頭で、すでに海が赤い。あれは、庵野さんの「これは総集編じゃないんだよ」っていう決意表明だったんだな、といまにして思いますけど(笑)。
やはりというか、
「エヴァ」だけに言える事じゃないと思いますが、
作り始めたらどんどん大規模になっちゃうものなんですよ。
たしか「シト新生」の時も総集編と新作ラストですからと言いつつ
春エヴァ・夏エヴァと膨らんじゃいましたし、
宮崎駿さんもちょっとした短編を作りますと言いつつ
たいてい長編大作になってしまいますし(笑)。
創造主の性なんです、きっと。
「序」冒頭の赤い海には確かにドキッ!としました。
あの夏の日の続き?それとも変化?
新たな「エヴァ」を見られるという高揚感があったとはいえ
アニメの「エヴァ」にひと区切りついた私に、
不安と期待が入り混じる「エヴァ」らしいとも言える感覚が
あのワンシーン一発で蘇りました。
庵野さんに見事やられましたね(笑)。
マリの設定は確信犯的でなないと言いますが?
庵野さんから出てきたマリというのは、僕の印象だと、加持の女性版みたいなイメージだったんです。
(中略)
秘密を知ってるぶん余裕があるキャラだったわけです。
マリを「全部知ってるキャラ」として描くのか、「見えてる部分しかわからないキャラ」として描くか、その部分で、庵野さんとやり取りが続きましたね。だから確信犯的に作っているというのとは、だいぶ違う。
またもマリの裏事情が語られましたね(笑)。
「破」の象徴であり「エヴァ」の変化を背負ったマリについては、
設定をまとめるまでずっと試行錯誤があったようですね。
何か目的があるようで、
利用されているのかしてるのか背後にはなにかしらの組織がいて、
シンジくんに見つかっちゃったけど(笑)
空から第3新東京市に侵入してくるあたりスパイのような女の子。
とりあえず、マリのポジションは苦心の産物としても、
「メガネ、メガネ・・・」と
「(胸がフィットとして)気持ち、いい♪」のシーンは
確信犯的ではないでしょうか?
貞本義行さんによる鶴巻さんの裏話
「貞本義行、鶴巻和哉を語る」と題して
スペシャルインタビューも掲載されています。
出会いや才能、趣味やジェネレーションギャップなど、
鶴巻さんの人となりのお話が面白いです。
そのなかでもちょっと気になったエピソードです。
鶴巻も『エヴァ』のキャラクターデザインをやってたって話をしてて。
(中略)
『さすがの猿飛』のヒロイン―霧賀魔子みたいなイメージだった、と。
わお、魔子ちゃん風のレイですか?!
「さすがの猿飛」も好きな作品で、
魔子ちゃんはたしかに可愛い♪
いちごパンティはともかく(笑)、あのポニーテールがいいですよね。
でもレイの設定とはやはり合わない髪型かな?
でもでも見てみたいな。
とってもボリュームがあって
それでいて面白くてあっという間に読んでしまったインタビュー記事でした。
「ヱヴァ」を、鶴巻和哉さんをもっと知るのにおススメします。
「ヱヴァ」の記事をたくさん取り扱ってきたCONTINUEも
今号で最終号。
さみしいですが、「ヱヴァ」などアニメ特集以外にも
本業のゲーム記事もとっても面白かったです。
お疲れさまでした、ありがとうございました。
予告では6月から「OTOME CONTINUE」として
新たなスタートをきるという事ですが・・・
「オトメ」?
文系女子、そして乙女のハートをもった男子向けとありますが、
今までの内容からするに青少年や
40代30代のアニメ&ゲーム世代の大人向けだったような気がしますが?
とにかくCONTINUEの新たな船出に期待しています。
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